#032 障がい者の自立と挑戦を筋力画力理論が応援!「デジタルおえかき講座:3限目」

#032 障がい者の自立と挑戦を筋力画力理論が応援!「デジタルおえかき講座:3限目」

難しいことも楽しみながら!斉藤幸延とジョブエルが目指す新しい障がい者支援の形!

2023/8/11

目次

    こんにちは、文筆家/ライターの淺羽一( @KotobaAsobiComです!
    今回はいよいよ、パートナーアーティストであり筋肉イラストレーターとして大活躍中の斉藤幸延( @yonyon76が講師を務める、障害を抱える方々を対象とした新しいサポートプロジェクトへの密着取材の〝3限目(最終回)〟です。
    前回、前々回から引き続き、兵庫県明石市にある自立生活訓練事業所「ジョブエル」さんの全面協力の下、「筋力画力理論」をベースとした障がい者向け「デジタルおえかき講座」の授業風景や取り組みの内容について皆さんとシェアさせていただきます。
    また、記事の最後では筋力画力理論を体現したような素敵な出会いについても紹介させていただきますので、ぜひお楽しみください!

    デジタルおえかき講座:イラストレーター斉藤幸延と、自立生活訓練事業所「ジョブエル」が共同でスタートさせたアート系の障がい者支援サービス事業。障害福祉サービス事業所において、障がい者などへ画像編集ソフト「Photoshop(フォトショップ、以下フォトショ)」を使ったデジタルアート技術を提供して自立に向けたスキル習得を支援すると共に、制作したイラストなどをNFTアートとして公開し収益化へつなげる取り組みをサポートする。
    筋力画力理論についてはこちらの記事を参照!〉→#001 【ごあいさつ】+【筋力画力理論とは?】





    【斉藤幸延のデジタルおえかき講座:3限目】

    それでは、いよいよ「デジタルおえかき講座」についての取材記事として最終回となる3限目です。また今回は、ジョブエルを運営する一般社団法人伸楽福祉会から、山下代表が語ってくださった日本の介護業界に対する想いも合わせてご紹介します!
    なお、1限目・2限目についてまだチェックされていない方は、ぜひ先に各記事をご覧ください。

    〈多種多様な個性が生み出された3限目〉

    お昼休憩を終えて3限目、授業内容は引き続きプロフィールカードの制作です。
    この辺りになると、徐々に各自のパソコン画面にも個性豊かな〝作品〟が並び始めました。

    大好きなK-POPと趣味の読書を融合させ、文字のフォントにもこだわりながらカラフルでオシャレな表現を作品化した人

    自分の似顔絵に愛用している大切なメガネのデザインを反映させつつ、大好きなアメコミヒーローとの共演を叶える人

    思い出の格闘ゲームのタイトルとキャラクター名を趣味の欄に並べながら、ゲームを遊んでいる自分の姿を描きたいと斉藤幸延へ相談する人
    ちなみにゲーム好きの彼へ僕が
    「あ、斉藤さんは昔ゲーム会社でゲームを作っていたよ」
    と教えたら教室内が一気に大盛り上がり。
    憧れの業界のプロが目の前にいれば、そら興奮するよね。


    他にも、たくさんの色を使い分けて自己アピールを工夫する人や、スマホで楽器やファッションの画像を確認しながら細部まで描き込む人、パソコンのカメラを操作して自分の〝顔写真〟を似顔絵レイヤーへ取り込む人文字色や構図にこだわって試行錯誤を続ける人――誰一人として同じスタイルを取らず、どれ一つとして同じ作品はなく、生徒全員が自分なりの感性と表現方法で学んだ技術を活用していました。


    〈失敗したくない想いと今できることへのチャレンジ〉

    ふと、ある女性が僕の目にとまりました。彼女は画面の一点、カンバスの右下を見つめて、しばらく動きません。
    そこで僕が声をかけると、彼女はこう言いました。
    「(趣味の欄に犬を描こうと思っていたけれど)犬を描くのは止めました」
    彼女にとって〝犬〟という動物はとても特別な存在で、大好きで大切な対象で、けれど今の自分ではどうしても上手に描くことができず、だからもうそれ以上そこに犬を描くことは難しいようでした。

    なるほど、そういうこともあるでしょう。
    そこで改めて彼女のプロフィールカードを見れば、可愛くデフォルメされた似顔絵は彼女自身の髪色に合わせた色で塗られていて、名前の周りは特殊ブラシで縁取られていて、それだけでもポップな作品として魅力的です。ただ、確かに右下のスペースが少しだけ寂しい。
    なので僕は、軽い思いつきで提案してみました。
    「じゃあ、サインを書いたらどうです?」
    イラストレーターや絵描きにとって、自分の作品へ〝サイン〟を入れることはとても大切です。斉藤幸延に限らず、僕のお友達のイラストレーターや絵描きは全員が自分の作品に独自のサインを入れます。
    であれば、当然ながらイラストレーターの卵である彼女達もまた「サインを入れる」という習慣を身につけておくべきではないでしょうか?

    すると彼女は「それなら」と、背景色として使っていたピンクの補色であるグリーンを選択し、自分の名前を工夫したサインを考え始めました。
    僕はといえば内心で
    (授業で教えられたわけでもないのに、初めてフォトショを触ったその日に迷わず補色を選んでサインを描くセンスはすげーな
    と素直に思っていました。結果的に、華やかでポップな印象だったプロフィールカードが、さらに右下の明るいグリーンのポイント使用できゅっと引き締まり、抜群の視覚効果。

    失敗したくないという気持ちが強すぎるあまり、手や足を止めてしまうことは誰にでも起こり得る話で、障害の有無は関係ありません。そしてまた、どんな属性を持っている人であろうとも、不足を自覚した上で自分なりのこだわりを貫きつつ、今の自分にできる方法で作品を進化させようと取り組む姿は、敬意を払われて然るべき美しさです。


    〈アウトプットの方法は人によって異なる〉

    さて、そんな彼女の後ろの席では、別の生徒が背筋を伸ばしてパソコン画面を凝視していました。身体にマヒのような症状があり、ペンタブを操作して線を引くのにも最初は苦労していた男性です。

    (この人も次にどうしようか分からずに困っているのかな? それともペンの操作に疲れたのかな?)

    しかし、そんなことを考えつつ様子をうかがった僕は、やがて違和感に気づきました。
    数分前に見た彼の作品と、今の画面に映し出されている作品と、何かが少し違うのです。
    そこで僕はそのまましばらく彼の様子を眺めることにしました。
    すると、さらに数分が経過した後で、彼はおもむろに机に置いていたペンを手に取り――

    (あ、なるほど。手書きした文字の太さやブラシのスタイルを変えて、それを自分なりに〝比較〟しているのか)

    それまでカンバスに表示されていた手書きの名前の一部を消し、改めてブラシの太さと色を変えて再び名前を手書きしたのです。そしてまた机にペンを置き、背筋を伸ばして元の姿勢に。
    その男性は、授業に飽きて動きを止めていたわけでも、何をして良いか分からずに思考停止していたわけでもなく、ただ頭の中で自分なりのイメージや表現を想像し、やがてまとまってからそれを画面に再現していたのです。

    もし、先に僕が男性へ
    「どうしたんですか? 分からないんですか? 何をしたいんですか?」
    とでも聞いていれば、それは善意ゆえの行動であったとしても、結果的に彼の思考を邪魔してせっかくまとまりかけていた表現のイメージを崩してしまったかも知れません。

    脳内にある〝何か〟を、自分なりのスタイルでアウトプットする――イメージを作品として再現することが創作活動であるとして。自分なりの表現の仕方や、何かを吸収してからイメージを膨らませた上で改めてアイデアを出力する――インプットからアウトプットまでにかかる時間や途中の様子は人によって異なるのだと、再認識させられた瞬間でした。

    ……とまぁ、こうして3時間目もたちまち過ぎていき。
    時刻はもう14時、この日の授業は終了となりました。



    〈難しいことでも楽しければ!〉

    3限目の授業が終了すると、各生徒はパソコンを返却し、一人また一人と授業の感想や挨拶を口にしながら教室を去っていきます。
    するとそんな中、一人の女性が教室から出る前に、副代表に対して「難しいですね」と言いました。彼女は授業中も積極的に質問したり発言したりしながら作業へ取り組んでいた生徒で、水彩画などアナログ絵画の経験はあるもののデジタルアートは初めてという人でした。
    「慣れないことばかりで難しいです」
    彼女はしきりにそう繰り返します。副代表もまたフォトショを使ったアートスキルについてはあまり詳しくないそうで、初心者の気持ちが分かるからこそ彼女の言葉に寄り添いながら「難しいですね」と二人で盛り上がっています。

    それを眺めていた僕は、会話の切れ目が生じた時にこう尋ねました。
    「楽しいですか?」

    利用者の女性は一瞬も置かずに
    「楽しいです! もっと練習したいです!」

    そして僕は、あぁ、と思いました。
    彼女の語る「難しい」は、文字通りの意味だけでなく、もしかすると「悔しい」という感情を込められた言葉なのかも知れないと。

    水彩画であればもっと自由に描けた。
    自分の描きたいことはいっぱいある。
    慣れないデジタルペイントは難しい。
    だから、思い通りに描けなくて〝悔しい〟……今はまだ。

    フォトショでイラストを描くことは、難しい、けれど楽しい

    いや、それもまた少し違うのかも知れず、むしろ

    〝フォトショでイラストを描くことが今はまだ難しくても、楽しいことだから頑張れる〟

    難しくて、楽しくもなくて、そんなことは一般に健常者と呼ばれる僕だってやりたくありません。
    難しいけど楽しい、楽しいけど難しい、それならばまぁとりあえず納得して続けられるかも知れません、難しさが楽しさを上回らない限りは。
    だけど、きっと本当に成長する上で大切なことは
    「難しいことも楽しみながらであれば取り組める」
    という環境であり、またその事実を自分なりに体験して実感して、そして自信の土台へとつなげることなのでしょう。

    フォトショの使い方に慣れれば、自分の描いたアナログ絵をスキャナーなどで画像として取り込み、それを素材として活用しながらデジタルアートへ昇華させることも可能になります。
    そしてそれが叶った時、この女性は一体どんな作品を僕達に見せてくれるのでしょうか。
    まだまだ楽しみは盛りだくさんですね。



    〈箱物ではなく〝人〟への投資を目指したい〉

    授業を終えて、夕方。改めて山下代表・副代表のご夫妻は、現在の介護業界の状況や問題点、それから将来的な目標や課題について僕と斉藤幸延へ語ってくれました。

    事実として、要介護者・要支援者の増加や介護人材の不足、地域社会と障がい者の関わり方や時代の流れに合わせた自立チャンスの変化など、介護福祉業界では現在すでに様々な課題があり、それは今後ますます重要なテーマとして業界内だけでなく日本全国で改善・解決に向けた取り組みが重ねられていくでしょう。
    しかし、そのような現況を前提として、代表がしきりに口にしていた言葉がとても印象に残っています。

    「私達は介護事業所や施設という〝箱〟でなく、それらを活用する〝人〟への投資こそを考えなくてはいけないんです」

    現在の日本では、国や各地方自治体の取り組みによって、介護事業者や関連施設に対して色々な助成金や補助金といった制度が用意されており、民間でも介護事業のフランチャイズなどがビジネスのスキーム(枠組み)として体系化されています。
    そのため資産運用や土地活用、節税対策として介護事業へ参入することが以前よりも比較的容易になっており、あるいはキャッシュフローをカバーする手法として介護診療報酬ファクタリングといったシステムも利用可能です。
    そう考えれば、なるほど介護福祉業界はこれから発展性が期待されるのかも知れません。
    しかしそれらはあくまでも「介護事業」というビジネスの業種の話であり、もしくは「介護事業施設」という〝箱物〟の運用方法についてのメソッドです。

    山下代表は言いました。
    「資本主義経済の中で民間企業が利益を考えることは悪くない。そもそも事業所の運営や経営が安定していなければ、必要とする人へ適切な支援サービスを提供することもできない。けれど、介護事業の本質であり主目的は、介護施設を維持して資産価値を高めることでなく、そこを利用する人々が社会へ積極的に参加して活躍できるチャンスを生むことです」

    それはつまり
    「介護事業所という〝箱〟に投資するのでなく、その利用者も含めた社会を構成する〝人〟への投資こそが重要なんですよ!」

    かつて〝ジャパニーズビジネスマン〟として、あるいは日本有数の大企業で経営陣として様々なプロジェクトを扱い、本当の意味でお金の流れや経済の動向を見つめてきた人物である山下代表だからこそ、その口から語られる内容と、何より熱意は説得力のある〝本物〟なのだと感じられました。



    〈斉藤幸延とジョブエルの出会いのきっかけ〉

    以上が、今回のジョブエルへの取材で僕が見聞きし、また体験させてもらった出来事です。
    ところで、皆さんの中にはどうして斉藤幸延が急に障害福祉サービス事業へ関わることになったのか、不思議に思っている人もいるのではないでしょうか。

    長々と続けてきた記事の締めくくりとして、そのきっかけをシェアしておきましょう。

    筋肉イラストレーターとして活躍する斉藤幸延が、どうしてジョブエルとタッグを組んで新しい障害福祉サービス事業を展開することになったのか。

    ポケモンカードやゴジラのグッズなどを手がける人気のイラストレーターだから?
    SNSのフォロワー数が万単位であり各種メディアでも紹介された有名人だから?

    もちろん、それらは斉藤幸延の〝講師としての価値〟を支える根拠です。
    しかし障がい者に寄り添う〝人としての誠実さ〟を信じられた理由は全く別のところにあったそうです。

    僕「そういえばさ、なんでジョブエルで講師をすることになったん?
    斉藤「なんか、自分がフジモトジムでスクワットを真剣にやってるのを山下代表が見てて、あれだけ筋トレに真面目に取り組める人間なら信用できそうって思われたらしいよ」
    僕「え? 最初に人気の絵描きだからって来た話やないん?」
    斉藤「うん。先にマッチョとして認知されて、お互いに仲良くなってから改めて仕事の話とかをしたら一気に盛り上がったんだよ


    こんなの笑うしかないでしょう、楽しくて、誇らしくて。
    実は山下代表も我らがフジモトジムで汗を流すマッチョマンであり、同じくジムで筋トレに精を出す斉藤幸延を見て、その姿に誠実性を感じたそうです。
    それは打算や虚飾なんてまるで介在しない、ただ人と人――マッチョとマッチョの対話から始まったストーリーでした。

    僕が以前に『筋力画力理論』を書いた時、そこでまさしく言及していた「筋肉の効果」の1つである
    「筋肉によって人脈を広げてチャンスも増やせる」
    という話が、まさかこんな形で実践されるとは……。
    ※引用元:「筋力画力理論 第3版」(3-11.〈人脈を広げてチャンスを増やしたい!〉),淺羽一, 斉藤幸延 著

    改めて『筋力画力理論』の可能性を実感すると共に、筋力画力理論にもとづいて肉体面でも技術面でも楽しみながら成長を続けるジョブエルの〝生徒達〟の未来に期待しかありません!





    ――というわけで、計3回にわたって書いてきた筋肉イラストレーター斉藤幸延と、自立生活訓練事業所「ジョブエル」がタッグを組んでスタートした新しい障がい者支援プロジェクト「デジタルおえかき講座」について、いかがだったでしょうか。
    今後、デジタルおえかき講座ではまだまだSNSを活用した展開や、メタバースを活用した展開など、楽しみな企画が控えています。
    一体どんなアイデアやプロジェクトが誕生し、多くの人々と共有されていくのか、少しでも魅力や期待感を伝えられたなら幸いです!


    【取材協力】

    一般社団法人 伸楽福祉会(しんがくふくしかい) ジョブエル
    〒673-0882 兵庫県明石市相生町1丁目2-34 佐藤ビル105号室/108号室





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