#024 WEBラジオやネット配信で重要な〝音声〟と、音質を左右する〝マイク〟の種類とは?

#024 WEBラジオやネット配信で重要な〝音声〟と、音質を左右する〝マイク〟の種類とは?

マイクの種類と特性を分かりやすくご紹介。目的に合ったマイク選びを叶えよう。

2022/6/13

こんにちは、文筆家/ライターの淺羽一( @KotobaAsobiComです。
実は最近、また何か新しいことを始めたいなということで、動画配信サービス【YouTube】にチャンネルを開設し、インターネット上でのラジオ配信/WEBラジオやライブ配信/動画配信のような企画を始めました。よろしければそちらでも気軽にお付き合いください。


――とはいえ、現状は完全な初心者で手探り状態、パートナーアーティストであるイラストレーターの斉藤幸延( @yonyon76 )や他のクリエイター仲間、友人たちにも協力してもらいながら、試行錯誤を繰り返す日々です。

さて、そんな中で『ネット配信を成功させるために重要なことは?』と考えた時、まず〝音声〟だという結論に至りました。
いや、実際問題、重要なことは色々とあるのです。ですが、ひとまず音声を適切かつ正確にオンラインで発信することができれば、少なくともWEBラジオのような企画は成立しそうです。

もちろん、音声といっても、発信者の声や楽器の演奏などといった〝音〟があれば、パソコン画面で流れている動画や楽曲の〝音〟などもあり、その種類もまた様々です。
ただし、例えば発信者/配信者の口から伝えられる声や言葉と、例えばパソコン画面に映る動画の音声では、本質的に違う点もあります。それはすなわち、
  • 音声がパソコンの〝外部〟から発せられている
  • 音声がパソコンの〝内部〟から発せられている
――音声がどこを起点として生じているかという違いです。
そしてパソコン内部で発生している音、つまり音声データであれば、それをそのままインターネットを通じて世界中へ届けることが可能です。
しかし人の声や楽器の音色、周囲の雑音といった音の場合、改めてそれを〝音声データとして取り込む過程〟が必要となります。
マイクは、そのような際に〝変換器〟としての役割を担う音響機器です。
ところで、僕は文筆家/ライターであると同時に、舞台業も営んでいます。そして舞台といえばマイクなどの音響機器も日常的に使用しており……。

ということで前置きが長くなりましたが、今回は物書きというより、プロの舞台業者としての立場で『マイク』について考えていきたいと思います。



マイクの種類?ダイナミック、コンデンサ、ワイヤレス

〈マイクは空気の振動を電気の信号に変換する機械〉

「マイク」と言われれば、いかにも人の声を増幅して大きくするための機械と考える人は少なくないでしょう。しかし実際の機能を考えた時、マイクの役目は『空気の振動を電気の信号に変換すること』となります。
そもそも『音』は波形で表されるように〝振動(音波)〟であり、例えば人の声は空気の振動によって他の人の耳/鼓膜へと届けられます。完全な真空状態では振動させる空気がなく、音が聞こえなくなるのもこの理由です。
一方、電気で動く機械の場合、音声もまた電気信号によって伝えられなければなりません。そこでマイクの出番です。

〈音波から電気を生み出し、音声を電気信号へ変換するダイナミックマイク〉

例えば『ダイナミックマイク』と呼ばれるマイクでは、音声として空気中に発せられた振動を、専用の〝振動板〟が感知して、さらにその振動板と連携したコイルなどが動いて電気を発生――音波を電気信号へ変換します。このようなダイナミックマイクは様々な場所で使用されており、ある意味では最もベーシックな機構といえるかも知れません。
なお、ダイナミックマイクで変換された電気信号はとても弱いため、改めてそれを増幅する装置(アンプ)を利用して大きな音に変換/再現します。
また、振動板が適切に振動しなければ音声信号を生み出せないため、音を拾える距離や角度、方向などの範囲に制限があることも重要です。

※ダイナミックマイク:SHURE SM58(通称:ゴッパー)

〈電源を別途利用して、音声を電気信号へ変換するコンデンサマイク〉

ダイナミックマイクに対して、外部電源を用いることで、ダイナミックマイクよりも高性能な集音装置として機能するマイクがあります。
それが『コンデンサマイク』です。
コンデンサマイクはダイナミックマイクよりも高感度で広範囲の音を拾える装置ですが、外部からの電源供給を受けなければならないということがポイントです。そのため、コンデンサマイクは特に優れた集音性を求められる環境や、録音スタジオなど音響機材一式が最初から整えられているような環境で使われることが多くなります。
コンデンサマイクにも様々な種類やメーカーがありますが、舞台やテレビで有名な機種としては『SONY C-38(通称:サンパチ)』などがありますね。

※コンデンサマイク:SONY C-38(サンパチ)

ちなみに、通常、舞台などで38マイクのようなコンデンサマイクを使用する場合、音響卓(ミキサー)という機械へマイクをつなぐと同時に、音響卓からマイクへと電源を供給することが一般的です。

※デジタル音響卓(デジタルミキサー):YAMAHA TF1

ただし、例えば38マイクには電池を電源として利用できる機能も備わっており、下の写真のように本体部分がぱかっと開いて電池を入れられるようになっています。

38マイクはわりと有名ですが、これはあまり一般に知られていない機能ではないでしょうか。
なお、音響卓を使わず、パソコンのマイク端子に直接つなげて使うようなコンデンサマイクもあります。そういった場合、パソコンからマイクへと電気が供給されます。下の写真は〝コンデンサータイプの薄型マイク(フラットマイク)〟です。

※フラットマイク(コンデンサータイプ):SANWA SUPPLY MM-MC23

〈コードを持たず電波で信号を送るワイヤレスマイク〉

さて、上述してきたマイクは全て〝マイクと音響卓/パソコンをコードでつなぐ〟タイプのマイク、すなわち『有線マイク』ですが、中には〝コードのないマイク〟も存在します。それが無線マイクやワイヤレスマイクと呼ばれる種類です。
ワイヤレスマイクは文字通り、ワイヤー(線)を持っていないマイクであり、原則として信号を送るマイク(送信機)と、信号を受け取るチューナー(受信機)がセットで利用されます。なお、受信機は改めて音響卓/パソコンと接続されます。
ワイヤレスマイクは送信側から受信側へ電波が正常に届く範囲であれば自由に移動して使えるため、舞台でもお芝居やコンサート、講演会など様々なイベントで使用されるアイテムです。
加えて、ワイヤレスマイクには手で持つタイプ(ハンドマイク)だけでなく、胸元にマイクを固定するピンマイクや、器具を使って頭部や口元にマイクを固定するヘッドセット、はたまたイヤホンとマイクが一体となった製品など、複数の方式があることもポイントです。

※最左(ワイヤレスマイク):JVC WM-980(ヘッドセット仕様)
※左から2番目(ワイヤレスハンドマイク):JVC WM-P970 


※イヤホンマイク:Kashimura BL-72

〈まだまだある様々なマイク〉

前述したような、ダイナミックマイク、コンデンサマイク、そしてワイヤレスマイクといった分類はマイクの基礎中の基礎といえる概念ですが、さらに実際は様々なマイクが存在します。
例えばネット配信やビデオ会議に利用するWEBカメラにもマイクが内蔵されており、だからこそWEBカメラを使えばマイクを用意しなくてもビデオ通話が可能になるのです。

※ウェブカメラ:logicool C922 Proウェブカメラ

〈目的と使用環境に合わせたマイクを選んで適切に設定する〉

ダイナミックマイクやコンデンサマイク、ワイヤレスマイクといった分類は、どれが優れているというわけでなく、システムや使い方などの違いでしかありません。
言い換えれば、マイク本来の性能を最大限に発揮させようとすれば、そもそも使用目的や使用環境に適したマイク選びをすることが大切です。
例えば多くの人が一斉に会話するような場面で、全員分のマイクを用意できない場合、フラットマイクやWEBカメラのマイクなど〝無指向性マイク〟を利用すれば周囲の音をまとめて集めることができます。
一方、一定範囲内で周囲の音をまとめて拾ってしまう無指向性マイクを使うと、余計な雑音や環境音まで混ざってしまい聞こえにくくなるかも知れません。そのような場合、集音範囲は限られている――指向性があるものの、手で持つダイナミックマイクを使ったり、ヘッドセットを使って口元を狙ったりすることが有効ということもあります。あるいはハンドマイクでも利用者が動き回る場合、有線マイクでなくワイヤレスマイク(セット)を利用することになるでしょう。
さらに、より高品質な音を求めようとすればダイナミックマイクでなくコンデンサマイクという選択肢になるかも知れません。
また、ただマイクの種類や選び方が正しいだけでは不十分です。実際にマイクを使う場合、音が大きすぎれば音量を絞り、特定の周波数(音域)が聞こえにくければイコライザー(EQ)など専用の機械やシステムで調整するといった設定が必要です。


もちろん、〝ただ音が聞こえれば良い〟という目的であれば、そこまで複雑な設定は不要でしょうが。はたまた一層に声質/音質や聞こえ方にこだわるのであれば、もっと――
とはいえ、ここから先はマイクだけでなく、さらに色々な音響システムや機械の話になっていきます。

――ということで、今回は『マイク』について、ごくごく基本的な部分を紹介しました。
個人的には、初心者がインターネットでライブ配信やWEBラジオなどを行う場合、最初にそこそこ性能の良いコンデンサマイクか、あるいはいっそWEBカメラを購入してそのマイクでまかなうといったことが良い気もします。しかし、まさしく僕自身が実感していることですが、この手の話はハマればどんどんより良い機材やシステムが欲しくなるもので……。
いずれにしても、たびたび安いマイクを買っては失敗してお金を無駄にすることがないように、最初に
  • どんな目的でネット配信などをするのか
  • どの程度のレベルでネット配信などをしたいのか
  • どんな環境でネット配信などを行いたいのか
  • 自分が話す場所やマイクとの位置関係はどうなるのか
  • 何円までなら予算として使えるのか
  • 使用するパソコンやタブレットとどう接続するのか(端子の種類や数は十分か)
  • 端子の形が合わなければ変換ケーブルなどで代用するのか
などなど、きちんと考えた上で自分なりに考えていきましょう。

〈余談〉

舞台業ではその場でマイクの音声や音質を聞いて、確認し、判断し、あるいは再調整することができますが。ネット配信のような場合、マイクで拾った音声は〝ネットの向こう側〟で再現されるため、僕の感想としては生の舞台で機材を操作している方が遙かに楽ですね。
僕たちがマイク設定で試行錯誤している様子は、僕と斉藤幸延によるWEBラジオ『筋力画力RADIO(仮)』などでも聞けるので、機会があればぜひご視聴ください。




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