#019 日本骨髄バンクからのHLA適合通知。オンラインで回答できるWEB問診システムを初体験。

#019 日本骨髄バンクからのHLA適合通知。オンラインで回答できるWEB問診システムを初体験。

骨髄バンクのドナーとして患者の治療へ協力するまでに多くのハードルがあるのです。

2022/4/17

こんにちは、文筆家/ライターの淺羽一( @KotobaAsobiComです。
先日、骨髄バンクから〝また〟僕の血液の細胞――白血球の『型』がとある患者さんの型と適合したという通知を受けたので、そのお話をご紹介します。
なお、今回の適合通知や回答はあくまでも『ドナー〝候補〟になりたいかどうかの意思確認』であり、必ずしも僕がドナーとして骨髄移植などの治療に協力できるとは限りません。
実際に骨髄バンクへドナー登録を行った後、適合通知を経て、どのような流れでドナーとして協力できるのか、改めて詳細について興味のある方は拙著【平成最後の夏にドナーになった体験を令和最初の夏に語ってみる。~主人公にならない主役達の物語~】にまとめていますので、ぜひご一読ください。
患者や家族の目線で描かれるドラマや映画、漫画は世の中にありますが、ドナーの視点に立って描かれる作品ってあんまりないですよね?




【適合通知へオンラインで回答するWEB問診!】

〈そもそも骨髄バンクと適合通知とは?〉

骨髄バンクは、例えば白血病や再生不良性貧血といった〝血液の病気〟を抱えている患者と、その治療で行われる『骨髄移植』などに〝提供者(ドナー)〟として協力する人をつなぐ〝橋渡し〟のような公共事業です。
かつては不治の病ともいわれた血液の病気ですが、現代では医療技術の進歩や医薬品メーカーの努力によって、投薬治療で症状の緩和・改善を目指せる例も増えています。しかし、やはり中には投薬治療だけで十分な効果を得られないケースもあるのが現実です。
そしてそのような場合、患者の体から〝病気の原因である悪い血液や細胞〟を取り除いて、代わりにドナーから採取した〝健康な血液(を作る)細胞〟を患者へ移植する『骨髄移植/造血幹細胞移植』といった治療が検討されます。

『血液型と〝血液の細胞の型〟』

血液型として『ABO型』は有名ですが、その他にも〝血液の細胞の型〟として『HLA型』というものが存在し、患者へ移植治療を行うには〝HLA型が適合しているドナー由来の細胞〟が欠かせません。

『血液の細胞の型を登録するドナー登録と適合通知』

骨髄バンクにはたくさんの人の『血液細胞の型(HLA型)』が登録されており、移植治療が必要になった患者が現れると、骨髄バンクのドナー登録者のリストと照会して〝ドナーになれる可能性のある登録者〟をピックアップします。
『適合通知』とは、それぞれのドナー登録者へ「あなたのHLA型が、どこかにいる患者さん(※)のHLA型と適合しました」と伝える通知であり、一般的には〝オレンジ色の封筒〟による郵送通知の他にも電話やSMSといった方法で実践されます。
※適合した患者がどこの誰であるかは、ドナーとして移植へ協力したとしても最後まで教えてもらうことはありません。この情報管理は非常に重要であり、徹底されています。

実際に適合通知が来る流れは、いきなり骨髄バンクからの封筒が届くケース、事前にSMSで連絡が来るケース、あるいはひとまず電話で「適合しました。適合通知を送付しても良いですか?」と確認が来るケースなど様々です。
そして今回、従来のシステムとは異なる『SMSで適合通知と専用ページへのログインIDが送信されてくる』という新しい通知方法を体験しました。
正直、「もしかすると日本最速の事例の1人じゃない?」とドキドキしたことも事実です。


〈オンラインで適合通知へ回答できるWEB問診システム〉

骨髄バンクが新サービスとして開始した『WEB問診システム』は、郵送によって問診票などのやりとりをしていた従来のシステムに対して、それぞれのドナーが自分のパソコンやスマホを使って、オンラインで速やかに『ドナーの〝候補〟として協力するか』の意思確認や健康状態などに関するアンケートへの回答を行えるシステムです。
WEB問診システムでは、まず患者と適合したドナー登録者の携帯電話/スマートフォンへSMS(ショート・メッセージ・サービス)が送られます。SMSには『適合した』という通知の他にも、適合通知を受け取った人だけが訪問できるWEBページのリンクURLや、専用のログインIDなどが記載されており、SMSを受け取った本人だけが専用ページへアクセスして回答できるという仕組みです。
なお、僕は〝ガラケー(フューチャーフォン)ユーザー〟ですが、今回も問題なくSMSを受信しました。ただし直接にページへアクセスすることはできず、改めてパソコンなどを使ってアクセスしなければなりませんが。


『従来のアンケートへの回答に加えて健康状態に関するデータを送信できる』

ちなみにWEB問診では一通りのアンケートへ回答した後、ドナーの健康状態へ関連するデータや資料(健診結果など)をPDFや画像(1枚のみ)として送信することも可能です。
適合者の健康状態は今後の〝ドナーコーディネート〟――ドナーとして協力できるかどうかの調整において重要になるため、速やかにデータを確認できるシステムとして有効だなと感じました。

※画面画像引用元:日本骨髄バンク 公式ホームページ|WEB問診

〈適合通知が来てもドナーになれるとは限らない〉

現在、骨髄バンクを介して〝見知らぬ患者〟の移植ドナーになれる回数は〝人生で最大2回〟と定められています。
一方、ドナー登録者として適合通知を受け取っても、その後に〝ドナーとしての適性を確認するための面談や検査〟などを受けなければならず、『適合通知を受け取ったからといってドナーになれるとは限らない』という点も重要です。
実際、僕はよほど〝良くある型〟なのか、1年に1~2回のペースで適合通知を受け取っており、手元には『適合者へ送られてくるパンフレット』がたくさんあります。
しかし僕が現時点でドナーとして協力できた回数は〝1回〟のみであり、過去のコーディネートでは全て先方に何かしらの事情や理由があってコーディネート中止、または別のドナー候補者に決定されるといった結果でした。
『ドナーが見つからずに移植治療ができない患者』という設定は様々な作品において見られますが、実は『患者のためにドナーになりたくてもなれない登録者』も多いという事実は、どうやら一般的にあまり共有されていないようです。

『WEB問診システムなど骨髄バンクもペーパーレス化が進んでいる』

ちなみにWEB問診システムではPDFデータとして必要資料を確認・ダウンロード可能になっており、その意味でもペーパーレス化が進んでいると感じました。
……いや、本当に、毎年どんどん増えていたので、個人的には楽になりました。ただし〝記念〟として実物を手元に置いておきたい人にとっては少し寂しい流れかも知れませんね。(※)
※2022年4月21日加筆修正:実際にはSMSが届いた時点で従来のオレンジ封筒も発送されており、WEB問診へ返信してから数日後にいつも通り骨髄バンクからの適合通知の一式が郵送されてきました。そのため、僕の手元にはまた新しく資料が追加されています。なお、すでにWEB問診を終えている人は郵送による返信が不要です。

なお、ピンクの表紙が印象的な『ドナーのためのハンドブック』は全ての適合者へ提供される資料ですが、『骨髄・末梢血幹細胞ドナー手帳――健康に関する様々な情報が記録されている冊子』は〝実際にドナーになった人〟しか持つことができません。ちょっとしたレアアイテムとして自慢できそうですよね。

※画像資料引用元:『公益財団法人日本骨髄バンク|ドナーのためのハンドブック』及び『一般社団法人日本造血細胞移植学会/公益財団法人日本骨髄バンク|骨髄・末梢血幹細胞ドナー手帳』

〈ドナー登録そのもののハードルは高くない〉

実際にドナーとして協力できるかどうかを考えると、登録者本人がどれだけ協力したいと望んでも叶わない場合は少なくありません。そもそも骨髄バンクへ登録したものの一度も適合通知を受け取らないまま卒業(満55歳の誕生日)を迎える人はたくさんいます。また適合通知を受け取っても、健康上の理由や仕事の都合、家族の考え方、さらには〝タイミング〟によって協力が困難な人も少なからずいます。
そう考えると、僕のHLA型は本当に〝患者の間で良くある型〟なのかも知れません。あるいは〝病気になりやすい型〟なのかも知れませんが、その辺はもう考え方によってどうとでも決められそうですね。とりあえず、今のところ僕は本当に健康体そのものといった状態なので、今後もそれを維持できればと思います。
いずれにしても、ドナーになることはそう簡単でないですが、反面、ドナー登録そのものは比較的簡単に行えることもポイントです。
一般論として、献血へ協力できる人(18歳以上54歳以下)であれば、ドナー登録も可能だと考えられます。
あくまでも僕の個人的な考えとして、献血もドナー登録も〝したい人がすれば良い〟と思っています。誰かに強制されたり、社会の雰囲気に流されたりして、自分の意思があいまいなままで参加するものではないでしょう。
もちろん、登録者が増えることは患者にとって〝適合の可能性〟が増えることであり、ひいてはどこかにいる誰かが救われる可能性の増加につながります。そしてもしかすると、そうやって救われた誰かが今度は他の誰かを助けたり、あるいはそうやって助けられた人が自分や自分にとって大切な誰かであったりする可能性も……ゼロではないでしょう。
正直、〝ドナーになりたい/登録したい〟理由は何であれ構わないと思っています。以前、登録したものの協力しない人が増加し、「協力する気のない人は登録を解消して」というアナウンスが公式に行われたこともありました。

その辺りの話はきっと人によって、状況によって様々な意味を持つでしょう。まず『登録してからドナーになるまでの流れ』について詳細がアナウンスされていないという問題もあると、個人的には考えます。さらにうがった見方をすれば、あまり詳しく説明しすぎると、そもそも登録者が減る可能性もあり――
とはいえ、それはまた別のお話。
ということで、今回は骨髄バンクのWEB問診システムや、ドナー登録者のもとへ届けられる『適合通知』について簡単にまとめました。
もしも興味があれば、気まぐれに公式サイトを閲覧したり、献血へ行ったりするところから始めてみてはいかがでしょうか?

〈※おまけ〉

実は『HLA型』の適合者が活躍するのは移植治療のドナーになる時だけでなく、〝特別な献血〟に協力する時も同様です。

骨髄バンクへのドナー登録と似ているようで少し違う、献血ルームで行われている『HLA適合血小板成分献血登録』についても、いずれお話できれば良いですね。

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